「うちは財産が少ないから、相続でもめることはない」——実はこれが最も危険な思い込みです。
家庭裁判所の統計でも、相続争いの多くは遺産額が比較的少ないケースで起きています。この記事では、遺産分割協議の進め方の基本と、もめないためのポイントを整理します。
裁判所が公表している司法統計年報でも、遺産分割で争いになる事件は遺産額が比較的少ないケースに多いとされており、財産の多さよりも情報共有の有無が結果を左右することがうかがえます。
遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、遺言書がない場合に、相続人全員で「誰が何をどれだけ相続するか」を話し合って決める手続きです。重要なのは、相続人全員の合意が必要だという点です。一人でも反対すれば成立しません。
話し合いがまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」にまとめ、全員が署名・押印します。これが預貯金の解約や不動産の名義変更に必要になります。
協議を始める前に確定すべき2つのこと
話し合いに入る前に、次の2点を必ず確定させます。ここが曖昧なまま進めると、後でやり直しになります。
- 相続人は誰か:戸籍で全員を確定する
- 財産は何があるか:プラス・マイナス両方を洗い出す
法定相続分の目安


遺言書がない場合、民法が定める「法定相続分」が話し合いの目安になります。ただし、これはあくまで基準で、全員が合意すれば自由な割合で分けられます。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者 | 他の相続人 |
|---|---|---|
| 配偶者と子 | 2分の1 | 子で2分の1を分ける |
| 配偶者と親 | 3分の2 | 親で3分の1を分ける |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | 兄弟姉妹で4分の1を分ける |
もめやすいのはどんなケース?


- 財産の大半が不動産:現金のように分けられず、誰が引き継ぐかでもめる
- 一部の相続人が生前に援助を受けていた:不公平感が生じる
- 親の介護をした人がいる:貢献を評価してほしいと主張が出る
- 相続人同士の関係が疎遠:連絡や合意形成が難航する



もめる原因の多くは、お金そのものより「不公平だと感じる気持ち」です。介護や援助など、金額に表れない事情を早めに共有しておくと、感情的な対立を防ぎやすくなります。
もめないための5つのポイント
- 財産をすべて明らかにする:隠し事は不信の原因になる
- 早めに全員で情報を共有する:後出しは対立を生む
- 感情と金額を分けて話す:介護などの貢献は別途話し合う
- 不動産は評価方法を先に決める:査定額でもめないように
- まとまらなければ専門家を入れる:第三者がいると冷静になれる
POINT|「不公平感」を放置せず早めに共有する
遺産分割でこじれる原因の多くは、金額そのものではなく「自分だけ知らなかった」「介護の負担を分かってもらえない」といった不公平感です。財産の全体像と、介護・援助などお金に表れない事情を、できるだけ早い段階で全員に共有しておくことが、もめないための一番の対策になります。
話し合いがまとまらないときは
当事者だけで解決できない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます。調停委員が間に入り、話し合いによる解決を目指す手続きです。それでもまとまらなければ、審判に移り、裁判所が分割方法を決めます。
ただし、調停・審判は時間も労力もかかります。できるだけ協議段階での解決を目指し、難しそうなら早めに弁護士へ相談するのが得策です。
遺産分割協議書の作成
合意ができたら、遺産分割協議書を作成します。次の点に注意してください。
- 相続人全員が署名し、実印で押印する
- 印鑑証明書を添付する
- 不動産は登記簿どおりに正確に記載する
- 後から見つかった財産の扱いも記載しておくと安心
よくある質問
相続人の一人が協議に応じない場合は?
全員の合意が必要なため、一人でも応じないと協議は成立しません。話し合いが難しい場合は、家庭裁判所の調停を検討します。
遠方に住む相続人がいても協議できますか?
できます。全員が同じ場所に集まる必要はなく、電話や書面でのやり取りでも構いません。最終的に全員が協議書に署名・押印すれば成立します。
介護をした分を多くもらえますか?
「寄与分」として認められる場合があります。ただし主張には根拠が必要で、争いになりやすい部分です。記録を残し、専門家に相談するとよいでしょう。
まとめ|「情報の共有」が最大の予防策
相続争いは、財産の多さではなく「不公平感」と「情報不足」から生まれます。財産をすべて明らかにし、早めに全員で共有し、感情と金額を切り分けて話す——この基本を守れば、多くのケースは円満にまとまります。難しいと感じたら、早い段階で専門家の力を借りてください。



話し合いが平行線になってきたら、こじれる前に家庭裁判所の調停や専門家という第三者を入れることも検討してください。早めに動くほど、関係を保ちながら解決しやすくなります。
参考・出典
- 裁判所「遺産分割調停の申立て」
- 法務省「相続手続きに関する案内」
- 日本弁護士連合会(相続に関する相談窓口)
関連ページ:手続き全体は相続手続きの全体像、相談先は相続手続きの専門家ガイドもご覧ください。

