この記事のポイント
- 献体とは、医学・歯学の教育や研究のために、死後に自分の遺体を大学などへ提供することをいう。
- 献体は生前に本人が登録し、遺族の同意があって初めて成立する。費用の負担は原則として大学側が行う。
- 遺骨が返還されるまでに数年かかる場合があり、通常の葬儀とは異なる流れをたどる点を事前に理解しておくことが大切。
献体の詳しい解説
献体の目的と意義
医師や歯科医師を育てるためには、人体の構造を直接学ぶ解剖実習が欠かせない。献体はその実習に必要な遺体を提供する、社会貢献の一形態として位置づけられている。
日本では1983年(昭和58年)に「医学及び歯科医学の教育のための献体に関する法律(献体法)」が施行され、制度として整備された。この法律により、献体は遺族の感情への配慮と遺体の尊厳を守りながら運用されることが定められている。
献体の登録方法と手続きの流れ
献体を希望する場合は、以下の流れで手続きを進める。
- 献体を希望する大学の医学部・歯学部、または各都道府県の献体登録団体に申し込む。
- 本人が登録書類に署名・押印し、遺族(主に配偶者や子)も同意書に署名する。
- 登録証を受け取り、生涯にわたって保管する。
- 本人が亡くなった際、遺族が登録先の大学や団体へ速やかに連絡する。
- 遺体が大学へ引き渡され、解剖実習・研究に用いられる。
- 実習・研究終了後、遺骨が遺族のもとへ返還される。
登録は無料で行えるため、費用面での負担は一切生じない。
献体後の流れと遺骨返還までの期間
遺体が大学へ引き渡された後、解剖実習・研究が終わると遺骨が火葬され、遺族へ返還される。返還までの期間は大学によって異なるが、おおむね1年〜3年程度かかる場合が多い。
大学によっては、毎年「解剖体納骨堂」や「慰霊祭」を執り行い、献体者への感謝と哀悼の意を示している。遺族が参列できる慰霊祭を開催している大学も多く、精神的なよりどころとなっている。
献体の費用・注意点・メリットとデメリット
費用の目安
献体に伴う遺体の搬送費・火葬費・骨壺などの費用は、原則として大学または団体が負担する。遺族が金銭的な費用を求められることは基本的にない。
ただし、大学へ遺体を引き渡す前に行う通夜・葬儀(お別れの儀式)や、遺骨返還後のお墓・永代供養の手配については、遺族側で費用を準備する必要がある。
献体を選ぶうえでの注意点
- 遺骨の返還まで数年かかるため、その間は手元に遺骨がない状態が続く。
- 遺族全員の理解と同意がなければ、本人の意思があっても献体は実施されない場合がある。
- 病状や死因によっては、大学側が受け入れを辞退するケースがある(感染症など)。
- 献体後の遺体は解剖されるため、通常の葬儀とは異なり、納棺・出棺の形式が変わることを理解しておく必要がある。
- 遺骨の返還先・返還後の供養方法について、生前に家族と話し合っておくことが重要。
献体のメリットとデメリット
献体のおもなメリットは次のとおり。
- 未来の医療を担う医師・歯科医師の育成に貢献できる。
- 搬送・火葬費用を大学が負担するため、遺族の経済的な負担が軽減される。
- 「社会の役に立ちたい」という本人の意志を形にできる。
一方で、デメリットとして考慮すべき点もある。
- 遺骨の返還まで数年かかるため、遺族が早期に供養・納骨を行えない。
- 遺体を大学へ引き渡す際、お別れの時間が短くなる可能性がある。
- 遺族全員の合意が得られない場合、登録していても献体が実行されないリスクがある。
関連する用語
献体を検討する際は、あわせて理解しておきたい用語がいくつかある。遺骨の返還後の供養先として「永代供養」を選ぶ方も多く、事前に選択肢を検討しておくとよい。また、献体の意志や遺族へのメッセージを記しておく手段として「エンディングノート」の活用も有効。葬儀の形式については「家族葬」や「一日葬」と組み合わせて考えるケースも見られる。
