この記事のポイント
- 自筆証書遺言は、遺言者が全文・日付・氏名を自筆で書き、押印することで成立する遺言書である
- 費用をかけずに作成できる一方、法的要件を満たさないと無効になるリスクがある
- 2020年の法改正により、法務局での保管制度が始まり、安全性が大きく向上した
自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)とは、遺言者本人がその全文・日付・氏名を自筆で書き、押印することによって成立する遺言書のことである。証人や公証人を必要とせず、紙とペンがあればいつでもひとりで作成できる、もっとも身近な遺言の形式だ。
自筆証書遺言とは何か
法律上の要件
自筆証書遺言は、民法968条に規定された遺言の方式である。有効に成立するためには、以下のすべての要件を満たす必要がある。
- 全文を遺言者本人が自筆(手書き)で書くこと
- 作成した日付を具体的に記載すること(「〇月吉日」は無効)
- 遺言者本人の氏名を自書すること
- 押印すること(認印でも可とされているが、実印が望ましい)
パソコンで作成した本文や、代筆は認められない。ただし、財産目録については2019年の法改正以降、パソコン作成や通帳のコピーの添付が認められるようになった。その際、目録の各ページに署名・押印が必要である。
作成の手順
自筆証書遺言を作成する流れは、次のとおりである。
- 遺言の内容を整理し、誰に何を遺すかを明確にする
- 用紙に全文を自筆で書き、日付・氏名を記入して押印する
- 封筒に入れて封をし、保管場所を信頼できる家族や弁護士に伝える、または法務局に預ける
完成後の保管方法は重要な問題だ。自宅で保管する場合、紛失・改ざん・発見されないまま終わるリスクがある。
法務局の保管制度
2020年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」を利用すると、法務局(遺言書保管所)が遺言書を原本とデータで保管してくれる。保管手数料は1通あたり3900円である。
この制度を利用すると、遺言者の死後に相続人が遺言書の有無を検索でき、家庭裁判所での「検認」手続きが不要になる。安全性と利便性が大きく高まるため、活用を強くすすめる。
メリット・デメリットと注意点
メリット
- 費用がほとんどかからない(法務局保管制度を使っても3900円)
- 証人が不要なため、内容を他人に知られずに作成できる
- いつでも・どこでも・何度でも作成・書き直しができる
- 思い立ったときにすぐ作成できる手軽さがある
デメリットと注意点
- 法的要件を一つでも欠くと、遺言書全体が無効になる
- 自宅保管の場合、紛失・隠匿・改ざんのリスクがある
- 法務局保管制度を使わない場合、家庭裁判所での「検認」が必要になる
- 内容が不明確だと、相続人の間で遺産分割協議が紛糾する恐れがある
検認とは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認する手続きのことだ。相続人全員に通知が必要で、手間と時間がかかる。法務局の保管制度を使えばこの手続きを省略できるため、積極的に活用したい。
公正証書遺言との違い
遺言書の代表的な形式として、公正証書遺言がある。公正証書遺言は公証人が作成に関与するため法的な安全性が高く、検認も不要だ。一方で、証人2名の立ち会いが必要で、公証人への手数料もかかる。費用や手間をかけてでも確実性を求めるなら公正証書遺言、手軽さと費用の安さを優先するなら自筆証書遺言(法務局保管制度を活用)という選び方が一般的である。
費用の目安
自筆証書遺言にかかる主な費用は以下のとおりである。
- 自宅保管の場合:実質0円(用紙・筆記用具代のみ)
- 法務局保管制度を利用する場合:3900円(1通)
- 弁護士・司法書士に内容確認を依頼する場合:数万円程度(事務所によって異なる)
作成自体は無料に近いが、内容の正確さが最重要である。専門家に内容の確認を依頼することで、無効リスクを大幅に減らせる。
関連する用語
自筆証書遺言を理解するうえで、あわせて知っておきたい用語がいくつかある。遺言で指定できる財産の内容については遺産の概念を押さえることが大切だ。また、遺言書があっても一定の相続人に認められる権利として遺留分がある。さらに、財産を相続人以外に贈ることを遺贈といい、自筆証書遺言でも指定が可能である。終活の一環として自分の希望をまとめておくエンディングノートも、遺言書と組み合わせて活用する方が増えている。
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