身内が亡くなったあと、遺品整理の見積りをいくつか比べる中で、「この業者で本当に大丈夫だろうか」と不安になることがあります。それは決して不幸な話ではありません。少し確認するだけで、避けられる失敗があります。
今回は、遺品整理業者を選ぶときに確認しておきたい「許可」の話をお伝えします。多くの人が見落としている点です。


チラシに「産業廃棄物処理業の許可あり」と書いてあったので、この業者にお願いしようと思っていました。これって、ちゃんとした業者ということですよね?
誤解その1|「産業廃棄物の許可」があれば家庭のごみも運べる
これは間違いです。環境省の案内によると、産業廃棄物処理業の許可は、工場や企業の廃棄物を処理するための許可です(環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」)。
福岡市の案内でも同じことが説明されています。産業廃棄物収集運搬業許可は、工場や企業の産業廃棄物を収集運搬するための許可であり、家庭のごみ(不用品)の回収はできません(福岡市「ごみ(不用品)の処分(不用品回収)に『無許可の回収業者』を利用しないでください」)。
北九州市の案内も同様で、産業廃棄物収集運搬業許可は、事業所(店舗、事務所等)からでる産業廃棄物を運ぶことができる許可だと明記されています(北九州市「家庭ごみの処分に『無許可の回収業者』を利用しないでください」)。
誤解その2|「古物商です」も家庭のごみを運ぶ許可にはならない
遺品整理業者のチラシには、古物商の許可番号が書かれていることもあります。しかし古物商の許可は、中古品等の売買を行うための許可です(環境省、福岡市、北九州市の各案内)。
つまり、遺品の中から使える家具や着物を買い取ってもらうのであれば古物商の許可で問題ありません。しかし、要らなくなった物を「回収」してもらうのは、まったく別の話です。
家庭のごみ(不用品)を回収するには、市区町村の「一般廃棄物収集運搬業許可」または委託が必要です(環境省の案内)。この許可がなければ、たとえ産業廃棄物の許可や古物商の許可を持っていても、家庭のごみは運べません。


なぜ許可が分かれているのか|ごみの出どころで法律が変わる
廃棄物を運ぶ許可は、その廃棄物が「どこから出たか」で種類が分かれています。工場や店舗から出る廃棄物は産業廃棄物、家庭から出る廃棄物は一般廃棄物として扱われます。
遺品整理で出るごみは、故人が住んでいた家庭から出るごみです。したがって、これを運ぶには一般廃棄物収集運搬業の許可が必要になります。
ここで問題になるのは、無許可で運ばれた廃棄物が、その後どう処理されるか確認できないという点です。環境省の案内では、無許可業者が回収した製品は適正にリサイクルされているか確認できず、家電製品に含まれるフロンや鉛、ヒ素といった有害物質が環境中に放出される恐れがあると説明されています。
北九州市の案内では、家庭から回収後、そのまま路上などに捨てられた例や、有害物質の処理を行わず圧砕して金属だけを取り出し換金する例が報告されているとされています。不法投棄は犯罪であり、依頼者側が不法投棄を疑われた上に、再度処理料を負担することになる可能性もあると案内されています。
無許可での収集運搬は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律により、5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、又はこれが併科されると北九州市の案内に明記されています(北九州市「家庭ごみの処分に『無許可の回収業者』を利用しないでください』」更新日:2026年2月18日)。



「提携」という言葉にも注意が必要です
実は「一般廃棄物収集運搬許可業者と提携しています」と書きながら、実際には無許可の業者がそのまま運んでしまうケースが報告されています。福岡市と北九州市、どちらの案内にもこの例が挙げられています。
チラシの文言だけで判断せず、実際に運ぶ業者そのものが許可を持っているかどうかを、必ず確認するようにしています。
依頼前に確認したいこと|許可番号の見せ方と自治体の窓口
まず、業者に「一般廃棄物収集運搬業の許可を持っていますか」と直接尋ねます。許可番号を提示できるか、口頭でも許可の有無をはっきり答えられるかを確認します。
次に、自治体が公表している許可業者の一覧を確認します。福岡市では、協同組合福岡市事業用環境協会のホームページで一般廃棄物収集運搬業許可業者を確認できると案内されています。北九州市でも同様に、一般廃棄物収集運搬業許可業者の一覧が案内されています。
判断に迷ったときは、お住まいの市区町村の環境局やごみ担当窓口に問い合わせる方法もあります。福岡市の案内では環境局循環型社会推進部収集管理課が、北九州市の案内では環境局循環社会推進部業務課が、それぞれ問い合わせ先として明記されています。
また、福岡市の案内には、一般廃棄物収集運搬業許可業者は軽トラック等で街宣しながら廃棄物を回収することはないとも記されています。街中で声をかけてくる業者への依頼には、この点も一つの判断材料になります。


よくある質問


なるほど、許可番号だけを見るのではなく、種類まで確認すればいいんですね。少し安心しました。



確認は一言で済みます
「一般廃棄物収集運搬業の許可はお持ちですか」と一言尋ねるだけです。ちゃんとした業者は、その場ではっきり答えてくれます。迷ったら、自治体の窓口に一覧を確認してから決めても、決して遅くはありません。
まとめ|見るべきは許可の「種類」
遺品整理を依頼する際、業者のチラシに書かれた「許可」の文字だけで安心してはいけません。産業廃棄物処理業の許可や古物商の許可では、家庭のごみは運べません。
必要なのは、市区町村が交付する一般廃棄物収集運搬業の許可です。この許可を持っているかどうかを、依頼前に必ず確認してください。
無許可の回収は廃棄物処理法違反となり、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金の対象になると北九州市の案内に明記されています。不安なときは、自治体の窓口や許可業者一覧を確認することが、遠回りにならない一番の近道です。
参考・出典
- 環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」https://www.env.go.jp/recycle/kaden/tv-recycle/qa.html
- 福岡市「ごみ(不用品)の処分(不用品回収)に『無許可の回収業者』を利用しないでください」https://www.city.fukuoka.lg.jp/kankyo/kateigomi/hp/mukyokanogyousyawosiyousinaide.html
- 北九州市「家庭ごみの処分に『無許可の回収業者』を利用しないでください」(更新日:2026年2月18日)https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/00800219.html
遺品整理の進め方全体を知りたい方は、遺品整理の進め方と業者の選び方|費用相場とチェックポイントもご覧ください。始める時期に迷う方は、遺品整理はいつから始める?3か月の期限から逆算するスケジュールを参考にしてください。

