実家が空き家のままだと分かっていても、すぐに動けない事情はあるものです。「税金が急に上がるらしい」という話を聞いて、不安になっている方もいるでしょう。ですが、その理解は少しだけ不正確です。まず落ち着いて、何が起きたときに何が変わるのかを整理しましょう。


実家が「特定空家」に指定されたって聞いて、急に税金が高くなるんじゃないかと心配なんです。指定された時点でもう終わりなんでしょうか。
誤解その1|「指定された瞬間」に税額が変わるわけではない
「特定空家に指定されたら固定資産税が上がる」という言い方は、実はよく誤解されています。国土交通省の空き家対策特設サイトによると、税負担が軽くなる「住宅用地特例」が受けられなくなるのは、指導に従わず「勧告」を受けたときです。
つまり、特定空家に「指定」された段階では、まだ税額は変わりません。市区町村からの指導があり、それに応じないまま勧告という次の段階に進んだときに、初めて住宅用地特例が外れます。
東京都主税局のページでも同様に、「賦課期日(1月1日)までに区からの勧告に対する必要な措置が講じられない家屋の敷地」について、住宅用地の特例の適用対象から除外されると説明されています。指定と勧告は別の段階であり、税額に関わるのは勧告のほうだと覚えておくとよいでしょう。
誤解その2|対象になるのは「特定空家」だけではない
もう一つの誤解は、税負担の見直しの対象が「特定空家」だけだと思い込んでいることです。令和5年12月13日に施行された改正空家法により、「管理不全空家」という新しい区分が加わりました。
国土交通省の空き家対策特設サイトの記事によれば、管理不全空家は「特定空家予備軍」とも呼ばれ、適切に管理がされていない空き家を指します。特定空家になるほど危険ではなくても、放置すれば特定空家に該当するおそれがある状態が、この区分にあたります。
東京都主税局のページでは、管理不全空家等について「適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれの状態にある空家等」と定義されています。
特定空家だけでなく、管理不全空家に対する指導に従わず勧告を受けた場合も、住宅用地特例が外れる対象になります。実家が「まだ特定空家ではない」からといって、税の見直しと無関係とは言えないということです。


なぜ勧告で税額が変わるのか|住宅用地特例という仕組み
そもそも、なぜ空き家に税の優遇が関係してくるのでしょうか。一般の住宅が建っている土地には、固定資産税や都市計画税が軽くなる「住宅用地特例」という仕組みが適用されています。
国土交通省の資料によると、住宅用地特例では、200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)は固定資産税の課税標準が6分の1に、200平方メートルを超える部分(一般住宅用地)は3分の1に減額されます。人が住むための家屋の敷地であることが、この優遇の前提になっています。
ところが、特定空家や管理不全空家として指導を受けても改善されず、勧告という段階に進んでしまうと、その土地は「住宅として適切に使われている」とは見なされにくくなります。東京都主税局のページの説明どおり、賦課期日である1月1日までに勧告に対する必要な措置が講じられていない場合、住宅用地特例の対象から外れます。
特例が外れれば、優遇されていた分の税額が本来の水準に戻る、という構造です。「税が上がる」のではなく、「軽くなっていた分がなくなる」というのが、より正確な言い方になります。



指定と勧告の間には、時間がある
ご相談で多いのは「指定=即アウト」という思い込みです。実際には指導の段階があり、そこで改善すれば勧告に進まずに済むケースもあります。実家の状況を早めに市区町村に相談しておくと、次に何が起きるかの見通しが持てます。
実家を空き家にしたまま迎える前に|今からできること
実家を空き家のままにしている方が今できることは、大きく分けて三つあります。一つ目は、市区町村の窓口に現在の状況を確認することです。特定空家や管理不全空家の指定・指導の有無は、所在地の役所に問い合わせれば分かります。
二つ目は、賦課期日である1月1日を意識したスケジュールで動くことです。東京都主税局の説明のとおり、勧告に対する措置が講じられているかどうかが、この日を基準に判断されます。年内に対応を終えるかどうかで、次の年の税額が変わる可能性があるということです。
三つ目は、国土交通省の資料にもあるとおり「しまう」(除却)か「活かす」(活用)のどちらかの方向で、対処を進めることです。ご自身で判断がつかない場合は、不動産や相続の専門家に相談する方法もあります。実家の片付けや遺品の整理から着手したい方は、以下の記事も参考にしてください。


よくある質問


指定と勧告が違うということが分かって、少し安心しました。それでも、うちの実家がどちらに向かっているのか、自分では判断がつきません。



まずは窓口に聞くところから
それで大丈夫です。今の段階を正確に知る一番の方法は、実家のある市区町村の窓口に直接聞くことです。指導が来ているのか、まだ何も届いていないのか。それを確認するだけで、次に何をすべきかが見えてきます。
まとめ|「指定」と「勧告」を分けて考える
実家を空き家のままにしていることへの不安は、多くの場合「指定=税額アップ」という誤解から来ています。実際に税負担が変わるのは、勧告を受け、賦課期日である1月1日までに対応できなかったときです。
また、令和5年の法改正により、特定空家だけでなく管理不全空家も同じ枠組みの対象になりました。今の実家がどの段階にあるのかを知ることが、何よりの安心につながります。焦って判断するより、まず窓口に確認することから始めましょう。
参考・出典
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
- 国土交通省 空き家対策特設サイト「空家法とは」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/articles/2024020105.html
- 東京都主税局「特定空家等または管理不全空家等に該当すると税額が高くなる場合があります」 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi/tokuteiakiya

