身内が亡くなると、気持ちが落ち着かないまま手続きに追われます。健康保険証の返却も、そのひとつです。「役所に一度行けば全部終わる」と思いがちですが、実はそうではありません。
加入していた保険の種類によって、窓口も期限も違います。ここで一度、落ち着いて整理しておきましょう。



父が亡くなって、保険証を返さないといけないと聞きました。役所に行けば、保険証のことも年金のことも、まとめてやってもらえますか。
誤解その1|「役所に行けば全部終わる」は成り立たない
故人が国民健康保険や後期高齢者医療に加入していた場合、返却と手続きの窓口は市区町村です。江東区の案内では、死亡届の提出により国民健康保険の資格は喪失するとされています(出典:江東区「国民健康保険被保険者(加入者)の方がお亡くなりになったとき」)。
一方、故人が会社員や公務員として被用者保険に加入していた場合は、話が変わります。この場合の資格喪失の手続きは、事業主が日本年金機構へ届け出る仕組みです(出典:日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」)。
つまり、故人がどちらの保険に入っていたかで、動く相手がまったく違います。市区町村の窓口だけで全部が終わるわけではありません。


誤解その2|「世帯主の手続きはいらない」も間違い
国民健康保険では、世帯主が亡くなった場合、残された家族の資格確認書を書き替える手続きが必要です。江東区の案内では、この届出期間は14日以内とされています(出典:江東区、前掲ページ)。
また、世帯主が亡くなったことで住民票に世帯主がいなくなった場合は、住民票の世帯主変更の手続きも別途必要になります(出典:江東区、前掲ページ)。死亡した本人の保険証や資格確認書は、葬祭費の申請時に回収されるとされています(出典:江東区、前掲ページ)。
後期高齢者医療の場合は、資格喪失届のほか、葬祭費支給申請書、相続人代表者指定届などをあわせて提出する必要があるとされています(出典:小金井市「後期高齢者医療の被保険者の方が亡くなった場合の手続き」)。
保険証や資格確認書は、すでに返却済みか紛失している場合は不要とされています(出典:小金井市、前掲ページ)。
なぜ窓口も期限も分かれるのか|加入先ごとに制度が独立している
健康保険の仕組みは、国民健康保険、後期高齢者医療、被用者保険という、別々の制度の集まりです。それぞれが独自の運営主体を持ち、独自の届出様式と期限を定めています。
国民健康保険と後期高齢者医療は、市区町村が保険者です。だから死亡の届出も、資格確認書の書き替えも、市区町村の窓口が窓口になります。
これに対して被用者保険は、会社に勤めていた人が入っていた保険です。資格喪失の届出は、本人や遺族ではなく、事業主が行う仕組みになっています。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、提出期限は事実発生から5日以内とされています(出典:日本年金機構、前掲ページ)。
遺族が直接年金事務所へ出向く手続きではない、という点が、国民健康保険との大きな違いです。勤務先への連絡が、最初の一歩になります。
図:加入していた保険ごとの窓口と期限
| 加入先 | 窓口 | 期限・備考 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 市区町村の窓口 | 死亡届提出で資格喪失。世帯主の場合、家族の書き替えは14日以内(江東区) |
| 後期高齢者医療 | 市区町村の窓口 | 資格喪失届、葬祭費申請書等を提出(小金井市) |
| 被用者保険 | 勤務先を通じて年金事務所または事務センター | 事業主が事実発生から5日以内に届出(日本年金機構) |



見落とされやすい点
被用者保険の資格喪失は、遺族が直接動く手続きではありません。事業主が届け出る形になっているので、まず勤務先に連絡することが先になります。保険証そのものの返却についても、どこへ渡せばよいか、勤務先に確認しておくと安心です。
読者が取れる具体策|まず故人の加入先を確認する
最初にすべきことは、故人がどの保険に加入していたかを確認することです。手元の保険証や資格確認書に、保険者の名前が書かれています。
国民健康保険や後期高齢者医療であれば、市区町村の窓口に連絡します。会社員だった場合は、まず勤務先の担当部署に連絡を入れることになります。
- 保険証や資格確認書に書かれた保険者名を確認する
- 国民健康保険・後期高齢者医療なら市区町村の窓口に連絡する
- 被用者保険なら、まず勤務先に連絡する
- 世帯主が亡くなった場合は、家族の資格確認書の書き替えも忘れずに行う
- 期限や必要書類は、自治体によって異なるため、窓口へ確認する
葬祭費や埋葬料の申請先や金額についても、加入先によって扱いが異なります。あわせて確認しておくと、手続きの抜け漏れを防げます。
関連記事として、葬祭費と埋葬料はいくら戻るか|加入している保険で金額も申請先も違うもあわせてご覧ください。
よくある質問



父は会社員で、母は国民健康保険です。それぞれ別に動かないといけないんですね。



ふたつの手続きとして考える
そうですね。お父様の分は勤務先への連絡、お母様の分は市区町村の窓口と、分けて考えると整理しやすくなります。期限が違うので、早めに確認先をメモしておくと安心です。


窓口が別々だと分かって、ひとまず落ち着きました。まずは勤務先に連絡してみます。
まとめ|加入先を確認することが最初の一歩
健康保険証の返却は、ひとつの窓口で完結する手続きではありません。国民健康保険や後期高齢者医療は市区町村、被用者保険は勤務先を通じて年金事務所という、別々の流れがあります。
期限もそれぞれ違います。まず故人の加入先を確認し、順番に連絡先を整理していくことが、落ち着いて手続きを進める近道です。
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参考・出典
- 日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20150407-02.html
- 江東区「国民健康保険被保険者(加入者)の方がお亡くなりになったとき」 https://www.city.koto.lg.jp/250102/fukushi/kokumin/soshitsu/5154.html
- 小金井市「後期高齢者医療の被保険者の方が亡くなった場合の手続き」 https://www.city.koganei.lg.jp/kenkofukuhsi/koreishafukushi/koukikoureishairyou/koukisiboutetuduki.html

