「身元保証サービス」という言葉を聞いて、不安になった方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは「怖いから契約するな」という話ではありません。国が事業者向けのガイドラインを作った理由を知れば、契約前に何を確認すればよいかが見えてきます。まずは落ち着いて、一つずつ整理していきましょう。



身元保証をお願いする契約って、テレビで問題になっているのを見たことがあります。うちも一人暮らしなので考えているのですが、預けたお金がなくなってしまったりしないでしょうか。
誤解その1|「契約すればお金は安全に守られる」は必ずしも正しくない
身元保証などの高齢者サポートサービスでは、契約時に葬儀や事務手続きの費用としてまとまった金額を前払いする形が一般的です。しかし国民生活センターが公表した資料(国民生活センター、2019年5月30日公表)によると、契約者が支払ったお金が想定と異なる形で扱われていたことで、事業者が破産した際にお金が返還されない、または一部しか返還されないといった相談が寄せられています。「契約書に書いてあるから大丈夫」と思い込まず、預けたお金がどのように管理されているかを確認する必要があります。
誤解その2|「途中でやめたら全額戻ってくる」とは限らない
国民生活センターの相談事例紹介(国民生活センター、2025年5月29日公表)では、生活保護などの利用者と契約したサービス事業者について、身元保証や死後事務、生活支援を契約したものの、途中で解約した際にどれだけの費用が返還されるのか、事前の説明が十分ではなかったという事例が紹介されています。同資料では「支払った金額の半分も戻らないと言われた」という80代の一人暮らしの方の相談も取り上げられています。契約時点では気づきにくい「解約時の取り扱い」こそ、事前に確認すべき点です。
また、国民生活センターへの相談件数の推移(国民生活センター、2019年5月30日公表、PIO-NETによる集計)を見ると、2013年度85件、2014年度99件、2015年度177件、2016年度127件、2017年度74件、2018年度101件と、一定数の相談が継続して寄せられていることがわかります。


なぜトラブルが起きるのか|業務がまたがる法律の広さという構造
消費者庁は、高齢者等終身サポート事業について、業務の内容が民事法や社会保障関係法など複数の法律にまたがっていることを踏まえ、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定しました(消費者庁公表資料)。事業者が守るべき法律上の規定や留意事項を整理したもので、利用者が事業者を判断する目安にもなるよう、チェックリストも合わせて作られています。
身元保証などの高齢者サポートサービスは、亡くなる前の入院や施設入所時の身元保証、亡くなった後の死後事務や生活支援まで、一つの契約の中に複数の役割が含まれます(国民生活センター、2019年5月30日公表)。役割が広い分、契約書だけでは全体像がつかみにくく、それがトラブルの起きやすさにつながっていると考えられます。



現場で見てきた「確認のしにくさ」
身元保証の契約書は、葬儀の契約書と違って項目が多岐にわたっていて、ご本人もご家族も全部を把握しきれていないことが多いんです。私がお手伝いする場面でも、契約している事業者の連絡先すら分からないというご相談をいただくことがあります。契約時に「誰が」「何を」「いくらで」やってくれるのか、書面で一つずつ確かめておくことが、後々のご自身とご家族の安心につながります。
契約前にできること|相談窓口とチェックリストの活用
国民生活センターは、契約内容や支払い方法についてよく理解できない場合、契約を急がず、身近な人に相談することを勧めています(国民生活センター、2025年5月29日公表)。具体的には次のような点を確認するとよいでしょう。
- サービス内容について、契約前に十分な説明を受けているか
- 支払った費用が事業者にどのように管理されているか
- 解約時の返還について、事前に予約や確認をしているか
- 契約について、身近な人に相談してから決めているか
- 不安な点があれば消費生活センターや地域包括支援センターに相談する
消費者庁の公表資料には「身元保証」や「お亡くなりになられた後」を支援するサービスの契約を考えている方向けのポイント集や、ガイドラインに基づくチェックリストが用意されています(消費者庁公表資料)。契約前にこうした資料に目を通しておくことも一つの備えになります。


よくある質問
高齢者等終身サポート事業とは、具体的にどのような契約ですか。
入院や施設入所時の身元保証、死亡時の身元保証・引き取りなどの死後事務、買い物や役所手続きの支援や見守りなどのサービスをまとめて行う契約です(国民生活センター、2019年5月30日公表)。事業を行う主体は葬儀社に限らず、他業種の事業者が担う場合もあります。
相談件数はどのくらいありますか。
国民生活センターの集計(PIO-NET、2019年5月30日公表)によると、2013年度から2018年度までの間、年間74件から177件の相談が寄せられています。
国はどのような対応をしていますか。
消費者庁が「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定し、事業者が遵守すべき法律上の規定や留意事項を整理しています(消費者庁公表資料)。
解約したいときはどうすればよいですか。
解約時の返還条件について、契約前にあらかじめ確認しておくことが勧められています(国民生活センター、2025年5月29日公表)。不安がある場合は、消費生活センター(消費者ホットライン188)へ相談する方法があります。
相談先はどこになりますか。
消費生活センターや地域包括支援センターが窓口として案内されています(消費者庁公表資料)。



契約自体が悪いわけではなくて、確認すべきことをちゃんと確認すればいいんですね。少し安心しました。



焦らず、一つずつで大丈夫です
身元保証サービスは、頼れるご家族が近くにいない方にとって心強い仕組みです。ただ、契約を急ぐ必要はありません。ガイドラインやチェックリストを手元に置いて、分からないところは事業者に聞き、それでも不安が残るなら相談窓口を使ってください。それだけで、ずいぶん見え方が変わってきます。
まとめ|契約を避けるためではなく、確認するためのガイドライン
身元保証サービスをめぐるトラブルは、サービスそのものが危険というより、契約内容や費用の扱いについての説明不足や理解不足から生じているケースが目立ちます(国民生活センター、2019年5月30日公表・2025年5月29日公表)。国が定めたガイドラインは、事業者を縛るためだけでなく、利用者が契約前に確認する目安としても作られています(消費者庁公表資料)。契約を急がず、身近な人や相談窓口を頼りながら、一つずつ確認していくことが安心につながります。
おひとりさまの終活について、身元保証以外の備え方も知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。おひとりさまの終活|身元保証・死後事務で備える4つのこと
参考・出典
- 国民生活センター「身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐるトラブルに気を付けましょう」(2019年5月30日公表) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20190530_1.html
- 消費者庁「いわゆる『高齢者等終身サポート事業』の利用に関する注意点」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_018
- 国民生活センター「高齢者サポートサービスの契約トラブルに注意」(2025年5月29日公表) https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen511.html

