「自分が倒れたら、誰が気づいてくれるのだろう」——単身で暮らす方から、最も多く寄せられる不安です。
身寄りがない、あるいは 家族に頼りたくない場合、終活で備えるべきポイントは家族がいる人とは大きく異なります。この記事では、おひとりさまが押さえておくべき身元保証・死後事務・財産の行き先の3点を中心に整理します。
おひとりさまは、もはや特別な存在ではありません。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、65歳以上の単独世帯は2020年の約738万世帯から、2050年には約1,084万世帯へと増加。2050年には65歳以上の男性の約4人に1人、女性の約3人に1人がひとり暮らしになると見込まれています。「自分の代わりに動いてくれる人」を、元気なうちに決めておくことが欠かせません。
おひとりさまの終活が「家族がいる人」と違う理由


家族がいる場合、入院時の手続きや葬儀、遺品の片づけは、自然と家族が引き受けます。しかし単身の場合、それを担う人が制度上いません。
つまり、おひとりさまの終活とは「自分の代わりに手続きをしてくれる人を、あらかじめ決めておく作業」だといえます。
| 場面 | 家族がいる場合 | おひとりさまの場合 |
|---|---|---|
| 入院・入居 | 家族が保証人になる | 身元保証サービス等が必要 |
| 判断力の低下 | 家族が支援・後見 | 任意後見契約で備える |
| 死亡後の手続き | 家族が届出・葬儀 | 死後事務委任契約が必要 |
| 財産の行き先 | 法定相続人へ | 遺言がなければ国庫へ |


備え1:身元保証(生きている間の支え)
入院や高齢者施設への入居では、多くの場合「身元保証人」を求められます。家族に頼めない場合は、身元保証サービスを提供する法人や、社会福祉協議会の支援事業を利用する方法があります。
注意したいのは、こうしたサービスは費用も内容も事業者によって大きく異なることです。契約前に、預託金の返還条件や、事業者が破綻した場合の保全措置を必ず確認してください。



高額な預託金を一括で預けるタイプの契約は、事業者の経営状況によってはリスクがあります。契約を急がされたら、いったん持ち帰って第三者に相談するのが安全です。
備え2:任意後見契約(判断力が落ちたときの備え)
認知症などで判断力が低下すると、預金の引き出しや契約手続きが自分ではできなくなります。元気なうちに、信頼できる人や専門家と任意後見契約を結んでおけば、いざというときに支援を受けられます。
契約は公正証書で作成する必要があるため、司法書士や弁護士などの専門家に相談しながら進めるのが一般的です。
POINT|4つの中で最優先は「死後事務委任契約」
身元保証・任意後見・死後事務委任・遺言の4つは、どれも大切ですが、おひとりさまが最も見落としがちで、かつ「誰も代われない」のが死後事務委任です。亡くなった後の届出・葬儀・住居の解約・遺品整理は、相続人でないと進めにくく、契約がなければ手続きが止まってしまいます。迷ったら、まずここから専門家に相談するのが確実です。
備え3:死後事務委任契約(亡くなった後の手続き)
見落とされがちですが、最も重要なのがこれです。人が亡くなった後には、次のような手続きが発生します。
- 死亡届の提出
- 葬儀・火葬の手配
- 賃貸住宅の解約と原状回復
- 公共料金・携帯電話・サブスクの解約
- 遺品の整理と処分
- 行政への各種届出
これらは相続人でなければ進めにくい手続きが多く、身寄りがない場合は誰も動けないまま放置されてしまいます。死後事務委任契約を専門家や法人と結んでおけば、あらかじめ決めた内容どおりに手続きを代行してもらえます。
備え4:遺言書で財産の行き先を決める
法定相続人がまったくいない場合、遺産は最終的に国庫に帰属します。お世話になった人や、支援したい団体に遺したい場合は、遺言書が不可欠です。
確実性を重視するなら、公証役場で作成する公正証書遺言が安心です。自筆の遺言は、様式の不備で無効になるリスクがあります。
孤独死を防ぐ・早く気づいてもらう工夫
- 自治体の見守りサービスや配食サービスを利用する
- 電気やガスの使用量で異変を検知する見守りサービス
- 定期的に連絡を取り合う相手を決めておく
- 緊急連絡先を玄関や冷蔵庫の見える場所に貼っておく
よくある質問
身寄りがなくても葬儀はしてもらえますか?
引き取り手がいない場合、自治体が火葬を行います。ただし希望の形式にはできないため、死後事務委任契約や生前契約で葬儀内容を決めておくのが確実です。
死後事務委任契約はどこに頼めばいいですか?
司法書士・行政書士・弁護士などの専門家や、NPO法人などが対応しています。費用や対応範囲に幅があるため、複数を比較して選ぶことをおすすめします。
甥や姪に迷惑をかけたくないのですが?
相続人になる可能性がある親族がいる場合でも、死後事務委任契約を結んでおけば手続きの負担を大きく減らせます。事前に意向を伝えておくとより安心です。
4つの備え・着手順チェック表
| 優先度 | 備え | 備えるリスク | 相談先の例 |
|---|---|---|---|
| 最優先 | 死後事務委任契約 | 死後の手続きが誰も進められない | 司法書士・行政書士・専門法人 |
| 高 | 身元保証 | 入院・入居ができない | 身元保証法人・社会福祉協議会 |
| 高 | 任意後見契約 | 判断力低下後に契約できない | 司法書士・弁護士(公正証書) |
| 中 | 遺言書(公正証書) | 財産が国庫に帰属してしまう | 公証役場・弁護士 |
まとめ|「頼れる仕組み」を先に作っておく
おひとりさまの終活で大切なのは、人ではなく仕組みに頼れる状態を作っておくことです。身元保証・任意後見・死後事務委任・遺言——この4つを整えておけば、判断力が落ちた後も、亡くなった後も、自分の希望に沿った形で手続きが進みます。まずは信頼できる専門家に相談するところから始めてみてください。
関連ページ:相続や契約の相談先については相続手続きの専門家ガイド、遺品整理の備えは遺品整理サービス比較もあわせてご覧ください。
参考・出典
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2024年推計」
- 高齢単身世帯・独居率に関する各種公的推計(2024〜2026年)

