この記事のポイント
- 遺言代用信託は、信託契約を使って遺言書と同様の財産承継を実現できる制度である。
- 金融機関や信託会社が受託者となり、契約者の死後に指定した受取人へ財産を引き渡す仕組みを持つ。
- 遺言書の作成・検認手続きが不要で、迅速かつ確実に財産を承継できる点が大きな特徴である。
遺言代用信託の仕組みと特徴
基本的な仕組み
遺言代用信託では、委託者・受託者・受益者という三者の関係で構成される。委託者は財産を信託会社や銀行(受託者)に預け、自分が生きている間は自らが受益者となって運用・管理の恩恵を受ける。
委託者が亡くなると、あらかじめ指定した「死亡後の受益者」(例:子や配偶者)が財産を受け取る権利を取得する。この承継のタイミングと受取人を、生前に契約で明確に定めておける点が最大の特徴である。
遺言書との違い
遺言書は、作成者の死後に遺産分割協議や家庭裁判所の検認手続きを経る場合がある。一方、遺言代用信託は契約に基づくため、死亡の事実が確認され次第、速やかに受取人へ財産が移転される。
また、自筆証書遺言や公正証書遺言では、相続人全員が関与する手続きが発生するケースも多い。遺言代用信託はその煩雑さを回避できる仕組みとして注目されている。
家族信託との違い
家族信託は、受託者を家族の一員(例:子ども)が担う形で財産管理を行う制度である。遺言代用信託は、受託者が信託会社・銀行などの金融機関となる点が大きく異なる。
家族信託は柔軟な財産管理が可能である一方、受託者となる家族に一定の負担と責任が生じる。遺言代用信託は専門機関が受託者となるため、管理の安定性と信頼性が高い。
対象となる財産
遺言代用信託で取り扱える財産は、主に金融資産(預貯金・有価証券など)が中心となる。不動産は対象外となる金融機関が多いため、事前に確認が必要である。
費用・手続きの目安と注意点
費用の目安
遺言代用信託の費用は、金融機関によって異なるが、一般的に次のような費目が発生する。
- 信託契約時の手数料(数万円〜数十万円が多い)
- 信託財産の管理手数料(信託財産額に応じた年率)
- 死亡後の給付・引き渡し手続き費用
無料で提供している金融機関もあるため、複数社を比較したうえで選択することが重要である。
手続きの流れ
遺言代用信託の一般的な手続きの流れは以下のとおりである。
- 金融機関へ相談・申し込みを行う
- 受取人(死亡後受益者)・財産内容・給付条件を決定する
- 信託契約書を締結し、対象財産を信託口座へ移す
- 委託者の死亡後、受取人が金融機関へ連絡し給付手続きを行う
注意点とデメリット
遺言代用信託には、次のような注意点がある。
- 遺留分の権利は消滅しないため、受取人への給付が遺留分侵害額請求の対象となる可能性がある
- 対象財産が金融資産に限定されるケースが多く、不動産や動産には対応しにくい
- 信託できる財産額に下限が設定されている金融機関がある
- 受取人の変更には手続きが必要で、柔軟な変更が難しい場合がある
特に遺留分の問題は、相続トラブルの原因になり得る。事前に弁護士や司法書士へ相談することを強く推奨する。
メリットのまとめ
- 遺言書の作成・検認が不要で、手続きが簡便である
- 受取人が確実かつ迅速に財産を受け取れる
- 専門の金融機関が管理するため、財産の安全性が高い
- 相続人以外の第三者(例:内縁の配偶者)を受取人に指定できるケースがある
関連する用語
遺言代用信託を理解するうえでは、遺言信託や家族信託との違いを把握することが重要である。また、財産の承継方法としては生前贈与や遺贈も選択肢に挙がる。さらに、相続税の観点や、法定相続人の範囲についても合わせて確認しておくと、より適切な終活の判断につながる。
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