この記事のポイント
- 遺言信託とは、信託銀行などが遺言書の作成から保管・執行までをまとめてサポートするサービスである
- 自筆で作成する遺言書と比べ、紛失や偽造のリスクが低く、確実に遺志を実現しやすい
- 費用は数十万円から100万円以上かかる場合があり、契約内容を事前によく確認することが重要である
遺言信託(ゆいごんしんたく)とは、信託銀行や信託会社が、遺言書の作成支援・保管・遺言執行までを一括して請け負うサービスのことである。信託法上の「信託」とは厳密には異なる商品名として使われることが多いが、広く「遺言に関する総合的な支援サービス」として定着している。
遺言信託の詳しい解説
遺言信託の基本的な仕組み
遺言信託は、主に以下の3つの機能によって成り立っている。
- 遺言書の作成支援:専門スタッフや提携弁護士・司法書士が、遺言者の意思を整理し、法的に有効な公正証書遺言の作成をサポートする
- 遺言書の保管:完成した遺言書を信託銀行などが厳重に保管し、紛失・改ざんを防ぐ
- 遺言の執行:遺言者が亡くなった後、信託銀行などが遺言執行者として相続手続きを代行する
この3つがセットになっているため、遺言者は生前に手続きを完結させることができる。遺族が複雑な手続きに追われる負担を大きく軽減できる点が、遺言信託の最大の特長である。
遺言信託の流れ
契約から執行までの一般的な流れは、以下のとおりである。
- ①相談・ヒアリング:信託銀行などの担当者と面談し、遺産の状況や希望を整理する
- ②遺言書の作成:内容を確定し、公正証書遺言として公証役場で正式に作成する
- ③保管契約の締結:完成した遺言書を信託銀行が預かり、継続的に保管する
- ④死亡の確認と通知:遺言者が亡くなると、金融機関が定期的な安否確認や関係者からの連絡によって死亡を把握する
- ⑤遺言の執行:遺言執行者として相続手続きを進め、財産を各相続人や受遺者に引き渡す
執行が完了するまでの期間は、遺産の複雑さによって異なるが、数か月から1年以上かかるケースも珍しくない。
家族信託・死後事務委任との違い
- 家族信託:生前から財産の管理・運用を家族に任せる制度であり、認知症対策として注目されている。遺言信託とは目的が異なる
- 死後事務委任:葬儀の手配や公共料金の解約など、死後の実務手続きを第三者に委任するものである。財産の分配が主目的の遺言信託とは役割が異なる
- 遺言信託:あくまで遺言書を軸とした財産承継の支援であり、プロによる確実な執行が強みである
それぞれの制度は目的と対象が異なるため、自分の状況に合わせて組み合わせて活用することも選択肢のひとつである。
遺言信託の費用・メリット・注意点
費用の目安
遺言信託にかかる費用は、大きく分けて3種類ある。
- 契約時の初期費用:遺言書の作成支援や公正証書の手数料を含め、20万〜50万円程度が目安となる
- 保管手数料:年間数千円〜数万円程度の費用が、遺言者が存命の間、継続してかかる
- 執行報酬:死亡後の相続手続き代行に対して、遺産総額の0.5〜1.3%程度が相場とされる。遺産規模が大きいほど高額になる
合計すると、トータルで100万円を超えるケースも多い。費用は金融機関によって異なるため、複数社に見積もりを依頼することを推奨する。
メリットと注意点
遺言信託のおもなメリットは以下のとおりである。
- 法律の専門家が関与するため、無効になりにくい遺言書を作成できる
- 信託銀行が保管するため、遺言書の紛失・改ざん・隠蔽が起きにくい
- 遺族が遺言執行の複雑な手続きを自ら行う必要がなく、負担が軽減される
- 遺言者の意思が正確に実現されやすい
一方、注意すべき点もある。
- 費用が高額になりやすく、遺産規模が小さい場合はコストが割高になることがある
- 遺言内容の変更・撤回は可能だが、そのたびに費用が発生する場合がある
- 信託銀行が対応できる範囲は主に財産の分配であり、葬儀手配などは含まれない
- 遺留分への配慮が不十分な遺言内容は、後から遺留分侵害額請求を受けるリスクがある
作成時に遺留分を考慮した内容にしておくことが、紛争を防ぐうえで重要である。
関連する用語
遺言信託を検討する際には、あわせて理解しておきたい用語がいくつかある。遺言書の種類として自筆証書遺言や秘密証書遺言があり、それぞれ保管方法や有効性の要件が異なる。また、遺産分割協議や法定相続人の概念も、遺言信託の内容を決める際に欠かせない知識である。さらに、財産の一部を特定の相手に渡す遺贈や、生前に財産を贈る生前贈与も、遺産承継の手段として関連が深い。終活全体を見据えるなら、エンディングノートとの併用も有効である。
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