身内を亡くした直後は、お金の話をする余裕などないかもしれません。ですが、葬祭費や埋葬料は、申請しなければ受け取れないお金です。しかも「いくらもらえるか」は、亡くなった方が入っていた保険によって変わります。落ち着いて、順番に確認していきましょう。


ネットで調べたら「5万円もらえる」と書いてあったのですが、うちの父は違う保険だったみたいで……。同じ金額がもらえるわけではないんですか。
誤解その1|「5万円もらえる」はどの保険にも当てはまるわけではない
「葬祭費は5万円」という情報を見かけることがありますが、これは国民健康保険の話です。大津市の案内では、国民健康保険の被保険者が死亡したときの葬祭費は5万円と定められています(大津市「国民健康保険 被保険者が死亡したとき(葬祭費)」2025年11月26日更新)。
ところが同じ国民健康保険でも、金額は市区町村ごとに決められています。江東区の案内では、国民健康保険加入者が死亡したときの葬祭費は7万円です(江東区「国民健康保険加入者が死亡したときの葬祭費の支給」2026年8月1日更新)。
つまり「5万円」という数字は、あくまで一つの自治体の例です。亡くなった方が住んでいた市区町村の窓口で、実際の支給額を確認する必要があります。
誤解その2|75歳以上の方は「国民健康保険」ではなく「後期高齢者医療」
もう一つよくある誤解があります。「高齢の親が亡くなったから、国民健康保険の葬祭費を申請しよう」と思い込んでしまうケースです。
75歳以上の方の多くは、国民健康保険ではなく後期高齢者医療制度に加入しています。世田谷区の案内では、後期高齢者医療の資格確認書を持っていた方が亡くなったとき、葬祭費として7万円が支給されます(世田谷区「後期高齢者医療 葬祭費の支給」2025年8月1日更新)。
この7万円の内訳も決まっています。東京都後期高齢者医療広域連合からの葬祭費が5万円、世田谷区独自の被保険者葬祭給付金が2万円という構成です(同資料)。加入していた保険の種類によって、申請の窓口も金額の内訳もまったく別物になるということです。


なぜ保険の種類で金額が変わるのか|制度ごとに運営主体が違う
ここまで見てきたように、金額がばらばらなのには理由があります。国民健康保険は市区町村が運営し、支給額もそれぞれの自治体が定めています。だからこそ大津市と江東区で、5万円と7万円という差が生まれます。
一方、後期高齢者医療は都道府県ごとの広域連合が運営の中心です。世田谷区の例では、広域連合からの5万円に、区独自の給付金2万円が上乗せされています。運営する主体が別々である以上、金額も別々に決まる、という構造です。
また、支給の対象になる範囲にも決まりがあります。江東区の案内では、葬祭費の対象となる「葬祭」とは、死体の検案や運搬、火葬・埋葬・納骨、そしてこれらを行えない相当の理由がある場合のお別れ会や偲ぶ会を指すとされています(江東区、同資料)。
お布施や戒名料など喜捨金にあたる支出は、葬祭費用の領収書として認められません。



領収書の書き方一つで、申請が止まることがあります
現場でよくご相談を受けるのが、領収書の宛名や内訳です。江東区の案内にもあるとおり、亡くなった方の氏名、葬祭を行った方の氏名、そして葬祭にあたる費用であることが分かる記載が必要です。葬儀社に領収書を出してもらうときは、宛名を申請者名にしてもらい、内訳を確認しておくと、あとで窓口に何度も足を運ばずに済みます。
いま確認すべきこと|加入していた保険と申請期限の二つ
まず確認したいのは、亡くなった方がどの保険に加入していたかです。国民健康保険の資格確認書、または後期高齢者医療の資格確認書があれば、そこに加入していた制度が記載されています。
次に大切なのが申請期限です。大津市、江東区、世田谷区のいずれの案内でも、葬祭を行った日の翌日から2年を経過すると、時効となり申請できなくなると明記されています。落ち着いてからでよいので、2年以内に申請を済ませることを覚えておいてください。
申請に必要な書類も、それぞれの窓口で確認しておくと安心です。おおむね、亡くなった方の被保険者番号が分かるもの、葬祭を行った方であることが分かる書類(葬儀の領収書など)、振込先の口座が分かるものが求められます。喪主以外の方が受け取る場合は、委任状が必要になる自治体もあります。
| 制度・自治体 | 支給額 | 申請期限 |
|---|---|---|
| 国民健康保険(大津市) | 5万円 | 葬祭を行った日の翌日から2年 |
| 国民健康保険(江東区) | 7万円 | 葬祭執行日の翌日から2年 |
| 後期高齢者医療(世田谷区) | 7万円(内訳5万円+2万円) | 葬儀を行った日の翌日から2年 |


よくある質問


父の保険が何だったか、確認書を探して調べてみます。2年の間に申請すればいいなら、少し落ち着いてから動けそうです。



焦らず、でも忘れずに
2年という期限は、決して短くありません。まずは気持ちの整理を優先していただいて構いません。ただ、時間が経つと領収書や資格確認書を探すのが大変になることもあるので、書類だけは失くさないように保管しておいてください。
まとめ|「いくらもらえるか」は保険の種類で必ず変わる
葬祭費や埋葬料は、加入していた保険の種類によって金額も申請先も異なります。国民健康保険なら自治体ごとに金額が決まり、後期高齢者医療なら広域連合と自治体の給付が組み合わさります。
まずは亡くなった方の資格確認書を確認し、どの制度に加入していたかを把握してください。そのうえで、申請期限である2年を意識しながら、必要な書類をそろえていきましょう。
参考・出典
- 大津市「国民健康保険 被保険者が死亡したとき(葬祭費)」2025年11月26日更新 https://www.city.otsu.lg.jp/soshiki/020/1403/g/kokuho/kyufu/1389077917747.html
- 江東区「国民健康保険加入者が死亡したときの葬祭費の支給」2026年8月1日更新 https://www.city.koto.lg.jp/250104/fukushi/kokumin/kyufu/5169.html
- 世田谷区「後期高齢者医療 葬祭費の支給」2025年8月1日更新 https://www.city.setagaya.lg.jp/02060/344.html

