目次
この記事のポイント
- 寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、遺産分割において追加で認められる取り分のことである。
- 寄与分は民法904条の2に根拠を持つ法律上の制度であり、相続人間の合意または家庭裁判所の審判によって金額が決まる。
- 2019年の民法改正により、相続人以外の親族(たとえば長男の妻など)も「特別寄与料」として金銭請求できる制度が新設された。
寄与分の詳しい解説
寄与分が認められる「特別の貢献」とは
民法は、寄与分として認められる貢献の類型を大きく5つに分けて示している。- 療養看護型:被相続人が療養中に、相続人が看護・介護を継続して行い、ヘルパー等の費用支出を抑えた場合
- 事業従事型:被相続人の家業・農業・会社に無償または著しく低い報酬で長年従事し、財産を増やした場合
- 財産給付型:相続人が被相続人へ金銭を贈与・貸付するなどして財産の維持に貢献した場合
- 財産管理型:被相続人の不動産や資産を継続的に管理し、財産の減少を防いだ場合
- 扶養型:被相続人を長期にわたって経済的に扶養し、生活費を負担した場合
寄与分の計算方法と具体例
寄与分の金額が決まると、遺産分割の計算は次のように行われる。- 相続財産の総額から寄与分を差し引いた残額を「みなし相続財産」とする
- みなし相続財産を法定相続分にしたがって各相続人に配分する
- 寄与分を持つ相続人は、配分された取り分に寄与分を加えた額を受け取る
図:寄与分がある場合の遺産分割の仕組み
| ステップ | 内容 | 計算例(遺産4,000万円・子3人) |
|---|---|---|
| ① | 寄与分を確定する | 長男の寄与分=600万円 |
| ② | みなし相続財産を算出 | 4,000万円-600万円=3,400万円 |
| ③ | 法定相続分で配分 | 3,400万円÷3=各約1,133万円 |
| ④ | 寄与者は寄与分を加算 | 長男:1,133万円+600万円=約1,733万円 |
※端数処理のため合計が一致しない場合があります。あくまで目安の計算例です。
寄与分の決め方と手続きの流れ
寄与分の金額は、まず相続人全員の話し合いである遺産分割協議で決める。全員が合意すれば、その内容が有効となる。 合意に至らない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停の中で寄与分の協議を行う。調停でも折り合いがつかない場合は、審判手続きに移行し、裁判官が寄与分の内容を判断する。注意点と寄与分をめぐるトラブル
寄与分を主張する際の注意点
寄与分の主張には、具体的な証拠の準備が不可欠である。- 介護の記録(日誌・医療機関の受診記録・ヘルパー利用明細など)
- 事業への従事を示す書類(帳簿・給与台帳の不存在の確認など)
- 財産給付の証拠(銀行振込の記録・借用書など)
- 貢献期間・頻度・内容を客観的に示せる資料
寄与分と遺留分の関係
寄与分が認められても、他の相続人の遺留分を侵害することはできない。たとえば寄与分の主張が大きくても、他の法定相続人が最低限保証される遺留分は守られる。寄与分と遺留分が競合する場合の調整は、実務上複雑になることがあるため、専門家への相談が有効である。2019年改正による「特別寄与料」制度
2019年7月施行の改正民法により、相続人ではない親族も「特別寄与料」として金銭請求できるようになった。たとえば、長男の配偶者(子の嫁)が義父の介護に専念したケースがこれにあたる。ただし、請求できる期間は「相続の開始および相続人を知ったときから6か月以内」かつ「相続開始から1年以内」に限られる。期間を過ぎると請求権が消滅するため、注意が必要である。終活と寄与分への備え
寄与分は、死後に相続人間の話し合いで決めるため、認定される保証がなく紛争の原因になりやすい。生前にできる対策として、次のものが有効である。 公正証書遺言を作成しておくことが、もっとも確実に意思を実現する方法のひとつである。関連する用語
寄与分を理解するうえで、あわせて知っておきたい用語がある。遺留分は相続人が最低限受け取れる権利であり、寄与分との兼ね合いで検討が必要になる。相続や遺産分割協議の基礎も理解しておくと、寄与分の位置づけがより明確になる。また、特別受益は寄与分と対になる概念であり、生前に多く財産をもらっていた相続人の取り分を調整する制度として、セットで押さえておきたい。RELATED
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