身内が亡くなると、「相続税を払わなければ」と身構える方が少なくありません。ですが、相続税の申告が必要になるのは、実は一部の方だけです。まずは落ち着いて、基礎控除という「線引き」を確認するところから始めましょう。これは不幸な話ではなく、単なる計算の話です。



父が亡くなって、家と少しの預金を相続することになりました。相続税なんて払えるお金はないのですが、申告しないといけないのでしょうか。
誤解その1|「相続=相続税がかかる」ではない
相続や遺贈で財産を取得したからといって、必ず相続税がかかるわけではありません。国税庁のタックスアンサーNo.4102「相続税がかかる場合」によれば、正味の遺産額が「基礎控除額」を超える場合にはじめて、相続税の申告と納税が必要になります。
逆に言えば、取得した財産の価額の合計額が基礎控除額の範囲内であれば、申告も納税も必要ありません。これは国税庁No.4205「相続税の申告と納税」に明記されている内容です。
誤解その2|基礎控除額はみんな同じではない
基礎控除額は一律の金額ではありません。国税庁No.4102によれば、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という式で計算します。
つまり、法定相続人の数が多いほど、基礎控除額は大きくなります。自分の家庭の場合は何人が法定相続人にあたるのか、まずそこを確認することが出発点になります。


なぜこの線引きになるのか|計算の順序を見る
国税庁No.4152「相続税の計算」によれば、相続税の計算は「各人の課税価格の計算」「相続税の総額の計算」「各人ごとの相続税額の計算」「各人の納付税額の計算」という順序で進みます。
この中の「相続税の総額の計算」の段階で、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を出します。ここが超えるかどうかが、申告が必要かどうかの分かれ目です。
法定相続人の数を数えるときには注意点があります。国税庁No.4152の(注1)によれば、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の人数で数えます。
また養子がいる場合は、同資料の(注2)のとおり、実子がいるときは養子のうち1人まで、実子がいないときは養子のうち2人までしか、法定相続人の数に含められません。
さらに国税庁No.4152によれば、財産を取得した人が被相続人の配偶者、父母、子供以外の者である場合、税額控除を差し引く前の相続税額にその20パーセント相当額を加算したうえで、税額控除額を差し引くとされています。
孫が代襲相続する場合は加算の対象外ですが、子が生きている状態で孫を養子にした場合は加算の対象になる、という区別も同資料に記載されています。



見落とされやすい「20パーセント加算」
相続税の話は「基礎控除を超えるか」だけで終わらないんです。誰が財産を取得するかによって、税額が変わることがあります。配偶者・父母・子以外の方が取得した場合は、税額に20パーセントが加算される仕組みがあります。孫を養子にしている場合など、思わぬところで関わってくるので、該当しそうな方は早めに確認しておくと安心です。
読者が今できること|期限と提出先を確認する
申告が必要かどうかを判断したら、次は期限です。国税庁No.4205によれば、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。
納税も同じ期限内です。申告期限までに申告しなかった場合や、実際より少ない額で申告した場合には、加算税や延滞税がかかる場合があるとされています。
申告書の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地を所轄する税務署ではない、と国税庁No.4205に明記されています。ここを取り違える方もいるため、注意が必要です。
なお、正味の遺産額や法定相続人の数え方は家庭ごとに異なります。詳しい計算方法や申告の流れは、下記の内部リンクも参考にしてください。
図:基礎控除額の内訳の考え方
| 基礎となる金額 | 3,000万円 |
| 法定相続人1人あたりの加算額 | 600万円 × 人数 |
| 養子の数え方(実子がいる場合) | 養子のうち1人までを算入 |
| 養子の数え方(実子がいない場合) | 養子のうち2人までを算入 |
| 申告・納税の期限 | 死亡を知った日の翌日から10か月以内 |
よくある質問



基礎控除の範囲内かどうか、自分では判断がつかない気がします。どこに聞けばいいのでしょうか。



迷ったら税務署か税理士へ
正味の遺産額の計算は、非課税財産や債務の控除など細かい要素が絡みます。国税庁には「相続税の申告要否判定コーナー」という確認手段も用意されています。不安な場合は、被相続人の住所地を所轄する税務署に相談するのが確実です。


まずは法定相続人の数を数えて、基礎控除額を出してみます。少し落ち着きました。
まとめ|まず線を引いてから考える
相続税の申告が必要かどうかは、感覚ではなく計算で決まります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という一次情報にある式で機械的に算出できます。
正味の遺産額がこの基礎控除額を超えなければ、申告も納税も必要ありません。まずは自分の家庭の法定相続人の数を確認し、基礎控除額を計算するところから始めてみてください。
参考・出典
- 国税庁 No.4102「相続税がかかる場合」(令和8年4月1日現在法令等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm - 国税庁 No.4205「相続税の申告と納税」(令和8年4月1日現在法令等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm - 国税庁 No.4152「相続税の計算」(令和8年4月1日現在法令等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm

