終活では財産だけでなく、「もしも判断できなくなったとき」の医療や介護の希望を伝えておくことも大切です。延命治療やお金の管理を誰にどう託すか、元気なうちに考えておきましょう。
厚生労働省の意識調査では、一般国民の約7割が「延命治療などの希望をあらかじめ書き残しておく考え方(事前指示書)」に賛成しています。しかし実際に書面として残している人はごくわずかで、「賛成なのに、まだ書いていない」という状態の人がとても多いのが現状です。



【現場で聞いた話】
ご葬儀の現場で多かったのが「延命治療をどうするか、家族の中でも意見が割れてしまった」というご相談です。本人の希望が一言でも残っていれば、家族はその意思を尊重するだけで済みます。逆に何も残っていないと、決めた家族に「あの判断でよかったのか」という迷いが長く残ることも少なくありません。
医療の意思表示(リビングウィル)とは
リビングウィルとは、回復の見込みがないときに延命治療を希望するかどうかなど、医療に関する自分の意思をあらかじめ書き残しておくものです。家族が難しい判断を迫られる負担を減らせます。
- 延命治療を望むか望まないか
- 痛みをやわらげる緩和ケアの希望
- 最期を過ごしたい場所(自宅・病院など)
- 家族に伝えておきたい思い
お金や契約を託す制度の選び方


判断能力が低下したときに備え、財産管理や契約を託す制度があります。目的に応じて使い分けましょう。
| 制度 | 特徴 |
|---|---|
| 任意後見制度 | 元気なうちに後見人を自分で選び、契約で決めておく |
| 法定後見制度 | 判断能力が低下した後に家庭裁判所が後見人を選ぶ |
| 家族信託 | 家族に財産の管理・運用を任せる柔軟なしくみ |
| 財産管理委任契約 | 日常的なお金の管理を信頼できる人に委任する |
家族への伝え方のポイント
意思表示は書き残すだけでなく、家族と共有しておくことが重要です。いざというとき、書類の存在を家族が知らなければ意味がありません。
- 書類の保管場所を家族に伝えておく
- 元気なうちに一度は口頭でも希望を話しておく
- 年に1回など、気持ちの変化に合わせて見直す
POINT|完璧な書類より、まず「誰に託すか」を1人決める
制度や書式を調べ始めると難しく感じて手が止まりがちですが、いざというときにまず必要なのは「自分の代わりに判断・手続きをしてくれる人」です。書類を完璧に整える前に、信頼できる人を1人決めて意思を伝えておくだけでも、家族の負担は大きく変わります。
元気なうちに決めておきたい項目チェックリスト
| 区分 | 決めておくこと |
|---|---|
| 医療 | 延命治療・緩和ケアの希望/最期を過ごしたい場所 |
| お金・契約 | 財産管理を託す人/使う制度(任意後見・家族信託など) |
| 連絡・共有 | 意思を伝える家族/書類の保管場所 |
| 見直し | 気持ちが変わったときの更新のタイミング |



「縁起でもない」と後回しにされがちですが、意思を伝えておくことは家族への思いやりです。まずはエンディングノートに希望を書くところから始めてみましょう。
よくある質問
リビングウィルに決まった書式はありますか?
法律で定められた書式はありません。関連団体の書式やエンディングノートの該当欄を活用できます。医師や家族と共有しておくことが大切です。
任意後見はいつ契約すればよいですか?
判断能力があるうちでなければ契約できません。元気なうちに信頼できる人と公正証書で契約しておく必要があります。
家族信託と後見制度はどちらがよいですか?
目的によります。柔軟な資産の管理や承継を重視するなら家族信託、本人保護を重視するなら後見制度が向いています。専門家への相談をおすすめします。
まとめ
医療・介護の意思表示は、家族が難しい判断を背負わずに済むための備えです。希望を書き残し、信頼できる人と共有しておくことで、安心して毎日を過ごせます。
参考・出典
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」
- 公益財団法人 日本尊厳死協会(リビングウィルに関する各種資料)
- 法務省「成年後見制度・任意後見制度」/裁判所「後見人選任」に関する案内

